Archive for 2000年3月23日

ああ、許すまじ「立ち食いそば」の欺瞞性

「美味しくいただく」とは

 B級グルメを語るにあたり、「立ち食いそば」は欠かせない必須アイテムだ。でも、これについて書くことはつらい。本当につらい。なぜならば「立ち食いそば」には、正直言って許せないことが、あまりにも多いからだ。

 僕は何も「まずい」から許せないといっているのではない。まずくて許せないのなら、そもそもB級グルメは成り立たないじゃない、あなた。

 ちょっと話はそれるかもしれないが、そもそも僕は「究極」とか「至上」とかと冠せられるものには、あまり興味はない。むしろ重要なことは美味しく「いただく」ことが重要なのだ、と。

 例えば、ここにぬるいビールがあるとしよう。確かにまずい。だが、それをソフトボールでもやって、一汗かいて、芝生の上で飲んだとしてみよう。きっと美味しくいただけるはずである、と。逆に二日酔いの朝に、いきなりフランス料理でも出てきたら、君は美味しくいただけるだろうか。つまり「究極」とか「至上」なんて実体はないんだね。無明なんだね。渇愛なんだね。苦しみなんだね。そんなことを追求していると、また転生して、同じ苦しみを味わうんだね。そんなことを求めている人は悟りや解脱にほど遠い、と・・・。

 この辺はB級グルメの高位のステージに属することなので、別の機会に譲ることとしましょう。

 

この暴挙を許すな

 で、話をもどし、「立ち食いそば」がなぜ許せないかというと、平気でウソがまかり通るからなのです。このエッセーを書くにあたって、ここ何週間かは極力、外食は「立ち食いそば」ですまそうとしてきました。そうすると店の看板に書いてある、書いてある。「茹でたて」「揚げたて(天ぷらが―弓山注)」「本場の味」「生蕎麦(←大抵達筆で読めない)」・・・。

 もちろん何を持って「本場」「生」とするかは難しい。しかし大ざるに茹でた麺があがってて、それに水をぶっかけたものを、我々は決して「茹でたて」とは呼ばない。ナントカ工場から段ボールで送られてきた、きれいに同じ形をしたかき揚げをば、我々は絶対に「揚げたて」とは言わない。

 ある店では「この値段で、一流店よりウマイおそばが食べられます」というようなことが、入り口に大書してあって、食べたら・・・・。どうしてこんな暴挙がまかり通るんですかねぇ。でも、「立ち食いそば」は、それが普通なのだ。公正取引委員会も誰も、これを「誇大広告」だと認めない。

 われわれはぁ、こうしたぁ、欺瞞性をぉ、断固として許さないぞぉ!

 満腔の怒りをもってぇ、徹底的に糾弾するぞぉ!

 絶対に粉砕するぞぉ!(ハイ、一緒にご唱和を。― 粉砕するぞぉ)

 勝利するまで斗うぞぉ。(斗うぞぉ)

 勝利するぞぉ。(勝利するぞぉ) 勝利するぞぉぉ。

 ついでに、国鉄分割民営化にともなうぅ、JR駅構内「立ち食いそば」屋の「あじさい」一元化策動を許さないぞぉ!

 ぼーぎゃくのぉくも、ひかりをおおいぃ、てぇきのア・ラ・シはふきすさぶぅー。

 

「立ち食いそば」の改革

 少し疲れたので、トーンを変えましょう。

 こうした、許せない状況下で、少しずつ改善がなされているようです。「茹でたて」「揚げたて」にこだわる店が徐々に増えている。

 例えば「立ち食い」チェーン最大手の「富士そば」ですら、店内に「茹でたてをお客様にお出しするため、2、3分お待ちいただくばあいがございます」という張り紙を出すところがでてきている。確かに、こうして出てきた麺は、それなりの喉ごしが愉しめる。揚げたてにこだわる店もある。目白駅前「車」は、大抵、いつもフアイアーに火が入ってて、随時、かき揚げを揚げている。西池袋の「伊那」は日高昆布をはじめ出汁にこだわった店である。池袋三越裏の「花子」(名前をなんとかしてほしい。もしかして厨房で働かれているぽばさんの名前か!?)は、「茹でたて」「揚げたて」「出汁」の三拍子がそろった立ち食いとして評価されよう。

 だが、問題は残る。それは麺の香りなのだ。茹でたてだと、ある程度コシがでる。が、そば特有の香りも満喫できる「立ち食い」を、僕は寡聞にして知らない。きっとそば粉の比重なのだろうけど、価格との兼ね合いで、これが「立ち食いそば」の限界なのかもしれない。

 それに比べてうどんはいい。何がいいかというと、うどんは香りではなく、「こし」が重要だからである。で、何がいいかというと、うどんは、あまり知られてないことかもしれないが、冷凍保存がきくのだ。つまり茹でたての直後に冷凍保存しておけば、解凍とともに茹でたてが食べられる。試しに前述の「車」に行ってみるといい。冷凍されたうどんが湯に放り込まれ、あっという間に茹でたてうどんの出来上がり。それに揚げたての「かきか揚げ」と生卵を乗っけた「天玉うどん」は、立ち食い界のかなり上位に君臨する一品であると思っている。ただし、ここでもそばは冷凍ではない。ビニールに入ったゆで麺である。もちろん香りは期待できない。

 

B級グルメの極意

 でも、実は香りがなくってもいいと僕は思っている。いや、B級グルメ的にはOKなのだ。それはまずくってもOKということではなく、蕎麦と「立ち食いそば」は別のものと思えばいいんです。ここはB級グルメのかなり重要なことなのだけど、B級グルメはA級の下に位置するものではなく、A級とは別の体系に属するものである、と僕は考えています。だから香りもコシもない「立ち食いそば」は、「立ち食いそば」というジャンルの食べ物であって、それに蕎麦の香りなどを求めてはいけない。「マルちゃん緑のたぬき」は「カップ麺」というジャンルで勝負しているのであって、それに喉ごしがどうしたなど言っていけない。そう、そう考えると、ほら「立ち食いそば」も美味しくいただけるでしょ。ここにB級グルメの極意がある。

 ・・・・でも、やっぱ「茹でたて」はないよなぁ。