服部弘一郎+編集部編『シネマの宗教美学』フィルムアート社、2003年

 「十戒」など聖書系をはじめ、宗教を題材にした映画は多い。本書は欧米映画に通底する宗教的なモチーフを探り、そこに描かれる人間の生に対する“こだわり=美学”を描き出す。
映画も宗教も、本来存在しないものを、あたかも眼前にあるかのように映し出すという点で根っこは同じだ。生と死、善と悪、奇跡といった宗教的題材を全く欠いた映画の方が珍しい。しかし「タクシードライバー」のデ・ニーロを神が不在の世界における“復讐の天使”とみなし、「エイリアン3」のシガニー・ウィーバーを「裁かるるジャンヌ」(二人とも剃髪)に、さらには娼婦マグダナのマリアと重ねあわせるといったら驚きはしまいか。
 ただ、ポップカルチャーを大仰かつ軽妙にこじつける、よくあるサブカル論とは異なり、本書には神学的知識を繰り出し、あるいは“9.11”以降の動向をも射程にいれた力強い論考が続く。ベルイマンとパゾリーニとスコセッシが神の死の神学を背景に一脈通じているというくだりには思わず膝を叩いた。コラムやキーワード集、そして索引も便利だ。
 もっともキリスト教のようなドミナントな宗教がない日本では、シネマの宗教美学はどうなるのだろうか。本書日本篇を期待してやまない。

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