瀬口晴義『検証・オウム真理教事件―オウムと決別した元信者たちの告白』社会批評社、1998年

 この本は、オウム裁判を傍聴し、また関係者への濃密な取材を続けてきた新聞記者による元信者の内面の告白の書である。
 といっても本書は単なるオウム批判本でもなければ、ましてや客観性を装ったシンパ本でもない。個人の妄想が大きな錯誤となり、やがて取り返しのつかない犯罪を犯したオウムに、なぜ若者は魅せられていったのか。この当事者の魂の遍歴に少しでも近づくことに著者の関心は向けられている。
 例えば、弱者切り捨ての風潮に対する憤りを、オウム流の社会憎悪や破壊願望に重ね合わせてしまった少年。両親との葛藤から自らの存在価値を見失い、オウムに自分の居場所を見出していった少女。彼らの目には少なくとも一時はオウムが正義に、そして救い場に映ったはずである。こうした事例は、この問題が単にオウム=悪という図式だけでは理解できないことを教えてくれる。元信者が絞り出すように語る脱会に対する迷いの言葉や時折みせる激昂が、さらに事態の複雑さを物語っている。
 オウム事件を風化させることも、オウムを特殊なものとして片づけてしまうことも、かえってオウムに「虐げられたもの」としての正当性を与えるだけであろう。社会に対する敵意や「居場所のなさ」が何もオウムだけの問題でないことは、最近の少年犯罪にまつわる、さまざまな証言をみれば明らかである。重要なことは本書のような地道で正確な記録が蓄積され、多くの人がそれに関心の目を向けることに違いない。

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