『新宗教』復刊終了する

 大正期の月刊誌『新宗教』(全十七巻)の復刊が、この度、第二期の刊行をもって終了した。本誌は戦前最大の新宗教となった天理教の周辺にあって、天理教改革を叫んだ孤高の知識人・大平良平が大正四年四月から大正五年八月まで発行していた個人雑誌である。
 本誌は天理教教会本部からすると異端的文書とされるらしい。本部機関誌には「昨年来大平良平なる者、猥りに本教に関する書籍を発行し、独断なる言説をなしつゝあるが、右は本部に於て認めざるは無論、一般教会に於ても、斯かる言論に惑溺し、深大なる教祖立教の神意を没却し、信念の動揺、信仰の蹉跌なき様、堅く戒慎せられん事を警告す」などの声明がたびたび出された。しかも大平が分派的潮流に荷担し、またその後すぐ三十歳の若さで死去したこともあって、彼の名も本誌の存在も時とともに忘却の彼方に追いやられていった。雑誌は散逸し、天理図書館でさえ本誌を閲覧することが不可能となっている。しかしながら本誌復刊の意義は、単にこうした史料的希少性だけにとどまるものではない。
 復刊第二期に収録されている大正五年五月号から、大平は当時「二代教祖」「播州の親様」と呼ばれた女性を、天理教教祖中山みきの後継者として認める論説を発表する。この年はみきが死去してからの三十年たった大祭にあたり、天理教内では「天啓が再来する」とか「教祖が生まれかわる」といった伝承がみられた。こうした天啓者を待ち望む雰囲気の中で本誌は創刊されるが、その宗教的情熱は教会本部はもちろん彼の賛同者でさえ到底容認できない「生き神様」への信仰へと帰着する。本誌は一人の求道者が帰依に至るまでの信仰の孤独な軌跡とその論理をあますことろなく伝える貴重な史料でもある。
 また大正期には似たような天啓者待望がいくつかみられた。大正七年から十年にかけては、内村鑑三によるキリスト再臨運動や大本の「ミロクの世」「世の立替え立直し」の運動があった。また日本で大正元年以来活動を続けていたエホバの証人では、終末の到来とキリストの統治が大正三年に設定されていた。これらの影響関係は宗教史研究の今後の課題であり、その意味でも本書の史料的価値は大きい。
 本誌の復刊は、このように学術的に意義のあることは明らかであるが、天理教という教団にとっても意味あることと思う。大平は自らのたどった道こそが正統であると確信していたが、天理教の基本教理に照らしてみれば、大平の言説には錯誤や独善性が認められるのも事実である。今年、教祖誕生二百年祭を迎え、彼女のメッセージの現代的意義が教団内外で見直されようとしている。本誌が復刊されたことにより、大正期の宗教的情熱に触れ、また冷静に分析する機会を得たことは、天理教にとっても重要なことではなかろうか。本誌が多くの人の目に触れ、議論されることを望む。

4 comments

  1. HITE より:

    ある天理教分教会の一会長です。
    すみませんが、この復刻版をぜひ入手したいのですが、どうしたらいいのでしょうか?
    お教え下さい。

  2. 恋人 三重 より:

    甘酸っぱい恋愛の日記でかなり楽しく読んでます!

  3. オナニー より:

    ブログを楽しく拝見させてもらいました

  4. 柳沢太一 より:

    弓山達也 先生

    ブログを拝見しました。
    日本の思想史を研究している大学4年生です。

    「新宗教」の復刻版は、どこで閲覧することができますか?
    私も一度、触れてみたいと考えております。

    お手数ですが、よろしくお願いいたします。

    p.s.もし重複してしまっていたら、すみません。
    送信エラーが出ましたので、再送しました。

    柳沢太一

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