僕の卒論提出(4)口述試問

今日が面倒を見ている学生の提出締切り。一人を除いて(なんとか)無事に提出。今年も、いろいろとドラマがあった。このエッセーも今回でおしまい。
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さて卒論には口述試問という儀式がある。試問というとなんだか大げさだが、まぁ、面接試験である。僕のばあいは学外の先生に指導をお願いしたので、みんなと日程が違っていて、大学に行くと、学生は誰もいなかった。
1986年1月後半。学費値上げ闘争に大学側は機動隊の配備とロックアウト(大学による大学封鎖)で応えた。学生は本校キャンパスから閉め出され、近隣の大学施設に撤退を余儀なくされ、にらみ合いが続いていた。試験は全て中止。全教科がレポート郵送となっていた。
この年は異例の大雪で、誰もいないキャンパスに雪が積もり、足跡が数筋しか付いていなかった。指定された教室にいくと、先生が一人で待っておられた。先生は開口一番「君の論文の4つの限界を述べる」と宣言され、90分びっちり講義をされた。質問はなかったように記憶している。中間報告と同じように、教団資料のみを用いた手法や近世史研究に対する認識のなさが指摘された。最後の「何か質問は」に僕は何も言えず、口述試問は終わりになった。
誰もいない夕暮れのキャンパスにさらに積もった雪に、真新しい足跡をつけながら、大学を出てた。うまくいかなかった卒論作成、学費値上げ闘争に関われないもどかしさ、自分の進路などを考えているうちに、何だが無性に歩きたくなり、そのまま飯田橋から神楽坂を進み、早稲田に出て、そこから都電で家に帰った。
僕の論文は、その後、大学の懸賞論文では入賞して「努力賞」をいただいた。大学主催の立派な祝賀会があって(生まれて初めて食べるものも多数あった)、何だか偉くなったような気分にしてくれた。学費値上げ闘争の対応をめぐって、2人の学部長(一人は岩波から翻訳もでている高名な学者)がつかみ合いの喧嘩をする余興つきだった。
卒論指導していただいた先生とは、その後、年賀状のやりとりもなくなってしまったが、15年ぶりくらいに大正大学で開かれた学会の懇親会で再会した。というものの覚えてくださっているのかどうか心配で、ご挨拶できずに遠巻きに先生を見ていた(当時、その学会の大御所だった)。懇親会の途中、知り合いから「君は○○先生の教え子なんだって」と聞かれた。先生が「弓山っているのが大正大にいるだろ、あれの卒論を指導したのは私だ」ということを話されているようだった。お世話になった先生は商学部なので、卒論指導とかなく、いわゆる「教え子」というものがいないとされていた。だから、知り合いは「教え子」という発言に興味を持って僕のところに確かめにきたのだ。慌てて先生にビールをもってご挨拶に行ったところ、先生は「君のその後の業績は知っているよ。頑張っているね」と激励してくださった。
ここで僕の卒論は終わった、、、と何だか妙な実感があった。当時に、分野こそ、先生とは大きく異なってしまったが、「先生」というものは、いつまでたっても「先生」という存在なのだと納得した瞬間でもあった。

2 comments

  1. おかみ より:

    弓山先生、はじめまして。
    こちらに書き込んでいいのか分からなかったのですが、
    とんちんかんなコメントでごめんなさい。
    実は旅行をご一緒したものです・・・と言っても、先生は「はぁ?」かもしれませんが、南アフリカで先生と偶然お会いして、随分とお世話になったokamiの本体です。
    例の「美穂の旅」です。
    初めての「分身旅行」が、前知識のまったくない南アフリカで「???」だったのですが、先生のお陰で(ぷぷ)楽しく思い出深いものとなりました。
    この旅の為に私は別ブログを立ち上げた位、楽しかったです。
    こちらが、そのURLです。
    http://okami55.blog85.fc2.com/
    先生も登場しています。(なかなかの反響です)
    良かったら是非覗いてみてください。
    先生のご研究、とても興味深く拝見致しました。
    勿論私は生徒さんでも、また、その道の研究をしている者ではありませんが、これからちょくちょくお邪魔させて頂きたく思います。
    どうぞよろしくお願いいたします。

  2. 弓山達也 より:

    おかみさん、はじめまして!
    僕の分身が「美穂の旅」でご迷惑かけているようで、失礼しました。あの旅は僕としては6年前の夏のことです。だいたい本当のことですね。
    以下には僕自身のダーバン報告もあります。
    http://my.spinavi.net/yumiy…おかみさんは料理店を営んでいるご様子。
    僕も実は論文を書いているより飯を作っている方が楽しいなと思うことが時々。
    今度、おうかがいしたいですね。

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