ああ、許すまじ「立ち食いそば」の欺瞞性

「美味しくいただく」とは

 B級グルメを語るにあたり、「立ち食いそば」は欠かせない必須アイテムだ。でも、これについて書くことはつらい。本当につらい。なぜならば「立ち食いそば」には、正直言って許せないことが、あまりにも多いからだ。

 僕は何も「まずい」から許せないといっているのではない。まずくて許せないのなら、そもそもB級グルメは成り立たないじゃない、あなた。

 ちょっと話はそれるかもしれないが、そもそも僕は「究極」とか「至上」とかと冠せられるものには、あまり興味はない。むしろ重要なことは美味しく「いただく」ことが重要なのだ、と。

 例えば、ここにぬるいビールがあるとしよう。確かにまずい。だが、それをソフトボールでもやって、一汗かいて、芝生の上で飲んだとしてみよう。きっと美味しくいただけるはずである、と。逆に二日酔いの朝に、いきなりフランス料理でも出てきたら、君は美味しくいただけるだろうか。つまり「究極」とか「至上」なんて実体はないんだね。無明なんだね。渇愛なんだね。苦しみなんだね。そんなことを追求していると、また転生して、同じ苦しみを味わうんだね。そんなことを求めている人は悟りや解脱にほど遠い、と・・・。

 この辺はB級グルメの高位のステージに属することなので、別の機会に譲ることとしましょう。

 

この暴挙を許すな

 で、話をもどし、「立ち食いそば」がなぜ許せないかというと、平気でウソがまかり通るからなのです。このエッセーを書くにあたって、ここ何週間かは極力、外食は「立ち食いそば」ですまそうとしてきました。そうすると店の看板に書いてある、書いてある。「茹でたて」「揚げたて(天ぷらが―弓山注)」「本場の味」「生蕎麦(←大抵達筆で読めない)」・・・。

 もちろん何を持って「本場」「生」とするかは難しい。しかし大ざるに茹でた麺があがってて、それに水をぶっかけたものを、我々は決して「茹でたて」とは呼ばない。ナントカ工場から段ボールで送られてきた、きれいに同じ形をしたかき揚げをば、我々は絶対に「揚げたて」とは言わない。

 ある店では「この値段で、一流店よりウマイおそばが食べられます」というようなことが、入り口に大書してあって、食べたら・・・・。どうしてこんな暴挙がまかり通るんですかねぇ。でも、「立ち食いそば」は、それが普通なのだ。公正取引委員会も誰も、これを「誇大広告」だと認めない。

 われわれはぁ、こうしたぁ、欺瞞性をぉ、断固として許さないぞぉ!

 満腔の怒りをもってぇ、徹底的に糾弾するぞぉ!

 絶対に粉砕するぞぉ!(ハイ、一緒にご唱和を。― 粉砕するぞぉ)

 勝利するまで斗うぞぉ。(斗うぞぉ)

 勝利するぞぉ。(勝利するぞぉ) 勝利するぞぉぉ。

 ついでに、国鉄分割民営化にともなうぅ、JR駅構内「立ち食いそば」屋の「あじさい」一元化策動を許さないぞぉ!

 ぼーぎゃくのぉくも、ひかりをおおいぃ、てぇきのア・ラ・シはふきすさぶぅー。

 

「立ち食いそば」の改革

 少し疲れたので、トーンを変えましょう。

 こうした、許せない状況下で、少しずつ改善がなされているようです。「茹でたて」「揚げたて」にこだわる店が徐々に増えている。

 例えば「立ち食い」チェーン最大手の「富士そば」ですら、店内に「茹でたてをお客様にお出しするため、2、3分お待ちいただくばあいがございます」という張り紙を出すところがでてきている。確かに、こうして出てきた麺は、それなりの喉ごしが愉しめる。揚げたてにこだわる店もある。目白駅前「車」は、大抵、いつもフアイアーに火が入ってて、随時、かき揚げを揚げている。西池袋の「伊那」は日高昆布をはじめ出汁にこだわった店である。池袋三越裏の「花子」(名前をなんとかしてほしい。もしかして厨房で働かれているぽばさんの名前か!?)は、「茹でたて」「揚げたて」「出汁」の三拍子がそろった立ち食いとして評価されよう。

 だが、問題は残る。それは麺の香りなのだ。茹でたてだと、ある程度コシがでる。が、そば特有の香りも満喫できる「立ち食い」を、僕は寡聞にして知らない。きっとそば粉の比重なのだろうけど、価格との兼ね合いで、これが「立ち食いそば」の限界なのかもしれない。

 それに比べてうどんはいい。何がいいかというと、うどんは香りではなく、「こし」が重要だからである。で、何がいいかというと、うどんは、あまり知られてないことかもしれないが、冷凍保存がきくのだ。つまり茹でたての直後に冷凍保存しておけば、解凍とともに茹でたてが食べられる。試しに前述の「車」に行ってみるといい。冷凍されたうどんが湯に放り込まれ、あっという間に茹でたてうどんの出来上がり。それに揚げたての「かきか揚げ」と生卵を乗っけた「天玉うどん」は、立ち食い界のかなり上位に君臨する一品であると思っている。ただし、ここでもそばは冷凍ではない。ビニールに入ったゆで麺である。もちろん香りは期待できない。

 

B級グルメの極意

 でも、実は香りがなくってもいいと僕は思っている。いや、B級グルメ的にはOKなのだ。それはまずくってもOKということではなく、蕎麦と「立ち食いそば」は別のものと思えばいいんです。ここはB級グルメのかなり重要なことなのだけど、B級グルメはA級の下に位置するものではなく、A級とは別の体系に属するものである、と僕は考えています。だから香りもコシもない「立ち食いそば」は、「立ち食いそば」というジャンルの食べ物であって、それに蕎麦の香りなどを求めてはいけない。「マルちゃん緑のたぬき」は「カップ麺」というジャンルで勝負しているのであって、それに喉ごしがどうしたなど言っていけない。そう、そう考えると、ほら「立ち食いそば」も美味しくいただけるでしょ。ここにB級グルメの極意がある。

 ・・・・でも、やっぱ「茹でたて」はないよなぁ。

6 comments

  1. メメ夫 より:

    ゆで太郎はそば粉五割らしいですよ。
    立ち食いでは旨いほうだと思います。
    http://www.shinetsusyokuhin

  2. HTN より:

    こんにちは、
    何年か前に弓山先生に大正大で教わったものです。
    ホラ、M浦君の友達のバンドマンのHT野です。
    この春卒業しました。
    新宿の思い出横丁などにある「かめや」は、
    そば粉より小麦粉の割合を多くしていて、
    そのおかげで「ツルツル感、喉越し」が良いです。
    逆に「そば自体の香り」は薄いですね。一長一短。
    そばは送られて来た生ソバを茹でる「茹でたて」、
    天ぷらは狭いお店でもしっかり揚げていてボリューム
    もあります。
    はっきり言って、僕は2週に一度は食べます。
    大好きです。他の立ち食いソバがマズくて食えません。
    370円で天玉そばが食えるというのは駆け出しのバンドマンとっては天国です。
    http://rainbowbrige.jugem.c…(他人のブログですので参考までに)

  3. 弓山達也 より:

    htn君、こんちは。
    バンドマンになったんだね。
    君から貰ったCDは、まだちゃんと保管しているよ。
    メジャーになったらプレミアつくかなぁ。
    「かめや」情報、サンキュウです。今度、新宿で飲んだかえりに寄ってみます。

  4. FF攻略 より:

    ウチは毎日見てるけどそれってそれだけ面白いってことなんだよね♪

  5. 漫画界のいろんな裏話を聞けちゃう☆

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